ファシリテーションのスキルを向上させる方法
会議や議論をうまくリードできる能力をつけたい
会議を取りまとめたり、議論があらぬ方向に行きそうなのをうまくコントロールできる人、つまりファシリテーションのうまい人が時々いるけど、自分に出来るかと言われると自信がない。ファシリテーション力は仕事力にも通じるような気がする。自分でファシリテーションのスキルを向上させる方法はないのだろうか?
ファシリテーション力で技術コンサルタントとして顧客との信頼関係を築いてきた経験から、ファシリテーションのスキルを向上させる方法をお伝えします。
本記事の内容
- ファシリテーション・スキルとは?
- 板書でわかるファシリテーション力
- ファシリテーション・スキル向上のためのトレーニング法
ファシリテーション・スキルとは?
会議や打ち合わせは、進め方や参加者の特質によって効率的でない場合があります。
結論も次へのアクション計画も何もないまま終わって、ただ話をしただけなんていうこともしばしば起こりますよね。
会議を効率的に行うためには、事前の準備も必要ですが、会議をまとめる人の存在が鍵を握ると思います。
会社の活動の中でのファシリテーションとは、簡単にいうと会議や打ち合わせをスムーズに進行する司会の役を果たすことです。
イメージとしては、テレビのワイドショーのMCのような役割でしょうか。
様々な立場の人、異なる考えを持った人たちの議論を、脱線させないようにゴールに向かって先導していきます。
自分自身も意見を言いますが、他の人の発言を促したり、他の人の意見を時には要約したりして、参加者全員が同じ認識のもとで議論が進むようにします。
ある人の発言で議論が横道に逸れてしまって、目的と違う方向に進むようなときには議論を元の路線に戻すことも重要な役割です。
声の大きい人、発言力の強い人の意向に議論が偏らないようにすることも大切です。
結論そのものを自分の思い通りに導くのではなく、参加者の総意を一つの方向にまとめていきます。
議論がまとまらないときには、意見の異なるポイント、一致させるあるいは決定事項を得るための条件を決めます。
会議の後のアクション・アイテムを決めて、会議の結論を宣言するところまでがファシリテーターの役割となります。
ファシリテーションに必要な能力
うまいファシリテーションをするために必要な能力は、理想論ではありますが、以下のような能力だと思います。
- 他人の意見の本質を瞬時に理解する能力
- 複数の人の意見の共通性を引き出す能力
- 異なる意見をグループ分けしてそれぞれを要約する能力
- 議論のステップ、進め方を構想する能力
- 予期しない意見などで、議論の軌道修正を判断できる能力
こんなスーパーマン本当にいるのかっていうように思うかもしれませんが、実際に会議をうまく仕切る人は身近にいれば、当てはめてみてください。
すべてが完璧でないにしても、5つの能力を使いながら会議を進行していると思います。
もちろん、この中で弱い部分があると、そのことによって会議が乱れます。
例えば、1~3は強いけど、4、5が弱いと、複数の議題をこなせないまま脱線した議論を長々としてしまったりします。
3が弱いと、意見が割れたときに収拾しづらくなりますね。
ファシリテーター一人にすべてを負わせるのが難しい場合は、周りの人がカバーする、ということが働くと会議はうまく進行できると思います。
ファシリテーション・スキルは、仕事が出来る人の証でもあり、スキル向上によって会社の生産性を向上させ業績アップに貢献することができます。
板書でわかるファシリテーション力
フォーマルな会議では、議題がしっかりと決まっていて、式次第に則って配布資料やプレゼン資料を使って会議が進行されます。
ちょっとした打ち合わせでは、資料はある場合とない場合があると思いますが、参加者間の意見交換や議論が重視されますね。
会議の種類は色々と違いますが、いずれの場合でも細かな議論などが必要なときには、ホワイトボードなどを使って参加者の認識を一致させていったり、お互いの理解を深めたりします。
良いファシリテーターは、この板書をうまく活用します。
言葉というのは、ときどき発言者の意思とは違う伝わり方をしてしまうことがあります。
言った、言わないという問題も起きますね。
もちろん議事録によって結論やアクションアイテムは確認できますが、会議の時間中に認識が合わないまま時間を無駄にしたり、細かいところで認識があっていないまま会議が終了してしまうことで、後になって問題が起きることもあります。
しっかりと文字にすることも大事だし、イメージとして認識を合わせることも大切です。
ファシリテーターは、会議で議論すること、どういう結論になっていくのかを頭の中でイメージを作っていかなけれななりません。
議論をしながらの板書は、このイメージを表現することです。
難しい議題を討議するとき、どこから話していいか悩むようなこともあると思います。
最初の発言者が、突破口を切り開くために一つの視点から話し始めたりしますが、結論に導くためには複数の視点で話を進めなければならない場合、例えば板書に、今、AさんはXという視点で意見を言ってくれました。今日の議論では、X、Y、Zという視点でまず意見を出して、そこからQという議論を経てRを導いていきましょう、というストーリーをホワイトボードにレイアウトしておくと、議事進行やまとめの作業が楽になります。
議事を進めるストーリーを参加者に説明しながら議論を進めることも大事ですが、議論の前にストーリーが決まらないこともあります。
つまり、参加者の意見を聞きながらX、Y、Zという視点が明らかになっていくような場合で、議論を進めながらストーリーが作られていくのですが、会議を進めて板書をしながらホワイトボード上にストーリーが見えるようになると、参加者は討議の流れをしっかり認識できて効率的な議論が出来るようになります。
板書は、その人の性格も出ますが、結構ファシリテーションのスキルが表れるのだと思います。
きれいな字で丁寧に書く人もいるし、後で読めないような略字をたくさん書く人もいますが、字のきれいさではなく、会議の全体像がイメ―ジとして捉えられているかが大事だと思います。
ご自身で板書をするとき、あるいは他の人が板書をしているとき、ストーリーの視点で書けているかどうかチェックしてみてください。
参考記事: 「ファシリテーション力は鍛えられる」
ファシリテーション・スキル向上のためのトレーニング法
ファシリテーションのスキル向上のためには、前述の5つの能力を鍛える必要があります。
この5つの能力は、簡単にいうと「本質を捉える力」、あるいは単純にロジカルシンキングの力だと言えます。
本質を捉える力を向上させるトレーニングは、次の3つのキーワードを口癖にすることです。
- それは何故ですか?
- それはこういうことですか?
- その結果どうなりますか?
それは何故ですか?
まずは「なぜなぜ」思考を身に着けることです。
他人の言ったことって、実は意外にちゃんと聞いてないことが多くないですか?
興味がそれほどないことを、何となくスルーしてしまうのは仕方ないことです。
でも、それが癖になって、大事な話でも上っ面を聞いて、理解したつもりになって「へえ、そうなんだ。」と納得してしまってないでしょうか?
このわかったつもりが、会社内でのコミュニケ―ションを悪くしている原因だと私は思っています。
お互いに、しっかりと相手の意見や話を深く理解することが大事だし、コミュニケーションの質は「なぜですか?」というキーワードをお互いが使うことで変わっていきます。
5歳児が、「なんで?なんで?」と繰り返すことが、その子の成長に大きく寄与するのと同じように、大人でもたくさんのことに興味を持ち続けて、深く理解しようとすることは、大人の能力開発に必ず役立っていくと思います。
「それはなぜですか?」と聞かれて、イラっとして答えられないことありませんか?
それは、実はご自身も本当は理解できていないから、だからイラっとするのだと思います。
5歳児の親もそうですよね。答えられないようなことを聞かれると、答えをはぐらかそうとしますよね。
実は、親も質問に答えられないのだと思います。
「それはなぜですか?」を口癖にすることは、真実や本質を追及する癖をつけることになり、常に相手が何を言おうとしているかを聞き取ろうとする姿勢の表れにもなります。
それはこういうことですか?
相手の言ったことが、自分なりに理解できたとして、自分の理解が相手の意図と合っているかを確認します。
私は、XXXのように理解したけど、それは正しいですか?という気持ちで確認します。
サラリーマン時代に部下から報告を受けたとき、報告書を使って長々と説明を受けることがあります。
はっきり言うと説明は上手ではないし、報告書も難しい言葉が並んでいるけど、他人に何かを伝えるという意識があまり高くないものも多いですね。
そんなとき、自分なりに報告者の意図を読み取ろうとして、「あなたはこういうことが言いたいの?」と聞いてみます。
「そうです。」と言う場合もあるし、「いや、ちょっと違います。」という場合もあります。
本来は、報告する側に主に問題があるのですが、報告者や報告書の質の低下の問題はここでは置いておくとして、相互理解を深めるためには話を聞いた側から、「それはこういうことなの?」という問いかけも必要なのだと思います。
また、このように相手の言ったことを言い換えること、要約する能力がファシリテーション力を向上させることに繋がります。
相手の言うことを良く聞く癖、そしてそれを自分の言葉で言い換えることで、国語力として言い換える力、要約する力を向上させましょう。
その結果どうなりますか?
話の結論を求める癖をつけます。
それぞれの意見や議論の中身について、「だから、その結果どうなるの?」という疑問を持つことで、結論を追求する癖をつけます。
ものごとは因果関係でつながっています。
何かの症状は、別の症状の原因になっていることがしばしばあります。
因果関係の連鎖の途中で、議論が止まってしまうことで、本質を見失うことがしばしばあるのです。
因果関係をたどっていって、一番最後にたどり着くことが、ものごとの「本質」だということです。
「だからどうした?」というと言葉が悪いので、「だから、その結果どうなるの?」という質問をお互いがすることで、コミュニケーションの中で本質、結論にたどり着く癖をつけます。
ロジカルシンキングを学ぶ
良いファシリテーターになるためには、「本質を捉える力」をつけること、言い換えるとロジカルシンキングの力をつけることです。
ロジカルシンキングについて半日で学ぶ場を提供しています。
「論理思考力強化セミナー」
1.ロジカルシンキングとは
- 思考プロセス
- <演習>事実、仮説、意見の識別
2.TOC(制約の理論)基礎
- 制約の理論とは
- 継続的改善のステップ
- <演習>現状の問題改善の方法
3.問題の本質を読み解く
- 問題を症状として捉える(UDE)
- 対立解消図(クラウド)
- <演習>クラウドを書く
- TOCの全体像
4.ロジカルシンキングの訓練法
- 「なぜなぜ」と「だから何?」
- 因果関係ロジック
- <演習>思い込みの発見
投稿者プロフィール
- フューチャーシップ(株) 代表取締役
技術者のキャリアアップ請負人。日米複数の製造業で製品開発現場30年以上の経験、エンジニア育成の経験をもとに、エンジニアの活性化を通して日本企業の再生を目指し奔走中。
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フューチャーシップ(株) 代表取締役
技術者のキャリアアップ請負人。日米複数の製造業で製品開発現場30年以上の経験、エンジニア育成の経験をもとに、エンジニアの活性化を通して日本企業の再生を目指し奔走中。