大企業のように体系化した育成プログラムは用意できないが、企業の将来を担うエンジニアを育成したい!

エンジニア向け研修を会社として用意するのは難しい。外部研修への参加を促進したいが本業の忙しさもあってなかなか進まない。ベテラン技術者からのOJTに頼っているのが現実だが、時代にあった教育も考えないと、会社の将来を担う優秀な社員が育たない。そもそもエンジニアをどうやって育成すべきなのかを明確にしたい!!

 

企業の立場で、エンジニアにどうあって欲しいのか?

エンジニア個人の立場で、どんなキャリアパスを描くのか?

どちらも大変重要なテーマであり、でも、企業側もエンジニア個人も、明確に答えられる人はそんなに多くありません。

企業側、個人の立場での必要なスキルアップについて考察し、中小企業が考えるべきエンジニアのスキルアップ研修について提案します。

 

 

 

 

これからの世界でエンジニアが目指すべきものとは?

 

エンジニアの役割は何でしょうか?

新しい技術を生み出すこと?!

技術をベースにしたイノベーションを起こすこと?!

人それぞれは想いはあるかもしれません。

でも私は”技術”という所に固執しないで、エンジニアならではの能力をもっと別の形も含めて、広く社会の中で発揮して欲しいと思っています。

もちろん今や技術の進歩は目覚ましく、人々の生活も技術の進歩に支えられて大きく進化しています。

しかし一方で、Uber、AirBnB、Facebook、Twitterなどは、もちろん技術的背景を伴ってはいるものの、技術だけでイノベーションを起こしたわけではなく、顧客の進化を捉え、新しい文化を開拓することで、技術の進化と同期しながらイノベーションを起こしたものと言えるのだと思います。

三宅秀道さんは著書「新しい市場のつくりかた」の中で、日本企業が強くなるには技術神話は捨てるべきで、新しい文化を開発すること、そして「問題」そのものを開発することがこれからの世の中を変える、つまり新しい市場をつくることに繋がるとおっしゃっています。

平たく言うと、プロダクトアウトではなく、もっとマーケティング思考を強化しないと日本企業は浮上できないということです。

インターネットをはじめとする技術の急速な進歩は、企業と顧客との関係にも影響を及ぼしています。

品質の高いものを作れば売れる時代はとっくに終わっています。

だから。。。

エンジニアの役割も大きく変わらなければならないと思っています。

では、エンジニアの役割はどのように変わるべきなのか、企業側の目線と個人の立場の両方から見ていきます。

企業から見たエンジニアへの期待

上記のような時代の変化を考えると、まず、企業側こそ考え方を変えなければならないのだと思います。

収益を上げ、企業を存続させるという最大の使命を達成するために、市場を拡大し、イノベーションを起こし続ける必要がありますが、イノベーションを起こす考え方が、前述のように大きく変化しています。

技術神話を捨て、顧客の変化を読み、文化を変えるためのアクションをしていかなければなりません。

良いものを作っていれば売れる時代はもう終わったのです。

エンジニアを型にはめて、小さな領域の技術開発に閉じ込めていたのでは、企業は生き残っていけないのです。

多くの企業がやるべきことは、世の中の変化、顧客の変化、競合の変化を読んで、先手を打つことです。

社員一人ひとりの”創造性”が求められるわけです。

かといって、エンジニアが技術のことを疎かにして良いということではありません。

それぞれのエンジニアが技術力を高めながら、技術以外の能力を磨き、”変化”を読んで行動できる人間に育成すべきなのです。

エンジニアの育成に対するいくつかのキーワードがあります。

  • 世の中の”変化”を読んで新しい文化を生み出す
  • 顕在化した問題解決ではなく、自ら「問題」「課題」を生み出す
  • 会社の最大目的である「収益拡大」を常に考える

まとめると、企業側からエンジニアの将来にどのような期待をすべきかと言うと、それぞれの領域で技術力を磨きつつ、マーケティング能力、及び経営学の基礎知識を持って考えて行動する力を持たせることだと思います。

エンジニアの立場で目指すものを考える

企業に勤めるエンジニアは、会社人生の中でマネージメントコースか専門職コースかを選択する必要に迫られるケースがあります。

管理職を目指し、将来は企業の役員への可能性も含めたキャリアパスです。

一方、管理職よりは技術職で一生過ごしたい。技術職の最高位である技師長を目指し、管理ではなく技術を極めたいというキャリアパスもあります。

中小企業では、2つのキャリアパスを明確に区別せずに柔軟に対応する場合もありますが、大企業では決めたコースに沿っての育成を進めるケースが多いかもしれません。

エンジニアにとっては、マネージメントに進むか、技術職を貫くかの選択は結構大きな選択だと思います。

それぞれに特有の目指すべきものは、この後別途説明しますが、どちらのキャリアパスを選んでも、まず考えるべきは世の中が大きく変化しているということです。

製品開発の歴史はそんなに長くありません。

市場、マーケティングということを意識して、同じ製品を同じ品質で大量に生産し、販売して利益を得るというスタイルは、1900年代になってからで、フォードがT型フォードという自家用車を製造・販売したことが始まりと言われています。

つまり、マーケティングはまだまだ未成熟なものであり、これからも変化し続けるということなのです。

そして、マーケティングの歴史はフィリップ・コトラーの定義で以下のようにまとめられています。(参考記事:「フィリップ・コトラーの理論からマーケティング思考を進化させる」参照)

  1. マーケティング1.0 : 製品中心のマーケティング
  2. マーケティング2.0 : 消費者指向のマーケティング
  3. マーケティング3.0 : 価値主導のマーケティング
  4. マーケティング4.0 : SNSとマルチチャネルを意識したマーケティング

マーケティング4.0は、マーケティング3.0を補完する意味合いが強く、今現在、このマーケティング3.0と4.0の考え方への変化が求められているのですが、申し上げたい大事なポイントは消費者指向のマーケティング2.0から脱却できていない企業が非常に多いということです。

多くの企業が、競合との差別化のためのSTPマーケティングを展開していますが、前述のように、イノベーションの主戦場は技術革新だけでなく、新しい文化の創造に移りつつあり、その変化に対応しようとする考え方がマーケティング3.0であったり4.0であるわけなのですが、この考え方にまだ着いていけていない企業が多いということです。

これは、企業自体が気づいて企業が変わっていかなければいけないことではあるのですが、エンジニア自身もこの変化を意識すべきだと思っています。

そしてこの変化を理解するためには、一つはフィリップ・コトラーの理論などを含めて、マーケティングを学び、マーケティング思考を身に付けることが必要だと思います。

理論を学ぶのが難しければ、少なくとも世の中の変化として、20年~30年前と顧客の行動が変化していることをしっかりと意識するようにしましょう。

インターネットの進化、そしてSNSなど顧客同士のコミュニケーションのあり方が急激に変化していることで、顧客の製品を購入するための動機に変化が起き、製品情報を得るための情報網が拡大し、購入決定に至るまでの行動が変化していることを理解できれば、これまでのような製品開発では競争に勝てないことが理解できるはずです。

つまり、これからのエンジニアは、マネージャーコースか専門職コースかに関わらず、マーケティング思考を持っていないと、所属企業に貢献できないだけでなく、所属企業を離れたときに一エンジニアとしての価値が上がらないことになるのです。

マネージャ―コースへ進むエンジニアが目指すべきもの

エンジニアは基本的には自身のホームポジションとなる得意技術領域を持っていると思います。

マネージャ―コースに進むエンジニアも、得意技術領域を伸ばすことを止めてはいけません。

自分の技術力を伸ばしつつ、また実際にマネージャーの道に進んだ後も、得意領域でのエンジニアとしてのポジションを持ち続けるべきです。

技術者としての確固たる立場の上に、マネージャーとしての知識とノウハウを追加していくことが求められます。

また、マネージャーとして大成するためには、得意領域の技術を持った上で、ジェネラリストとして技術の本質をしっかりと理解する人になることも求められます。

つまり、自分が馴染みのない技術の話でも、その本質を聞き取り、理解する力です。

技術の細かい内容ではありません。

技術を高めるためのアプローチ、技術開発の手順、問題解決の考え方は、どんな技術領域でも同じはずです。

個々の技術の難しい話に惑わされることなく、本質的な技術開発の考え方をしっかりと身に付けることで、すべての技術領域で技術マネージメントが可能になります。

これがジェネラリストになるということです。

ジェネラリストを極めるためには、自身の思い込みを排除して常に”本質”を見極める力をつける必要があります

そして、本質を見極める力は、ロジカルシンキング(論理思考)であり、ロジカルシンキングを高めるためには「質問力」の上達が必要だと思っています。(参考記事:「質問力を高めるとロジカルシンキング力が上がって仕事が出来る人になる」)

 

 

さらにマネージャーを目指すエンジニアは、経営に関する知識とノウハウをつけていかなければなりません。

しかし、なにもMBAや中小企業診断士の資格を取れということではありません。

まず、経営学の導入編としては、成功企業や経営者としての成功者について学びましょう。

トヨタに関する本が多数出ていますが、とても参考になると思います。

他社を知る、ということだけでも経営を知る一歩になります。

そして、製品開発組織のリーダーになるために必要な学問は、

  1. マーケティング
  2. 戦略論
  3. 組織論
  4. 技術経営(MOT)
  5. 経理・財務

などになりますが、特にマーケティングは第一優先、次に戦略ではないかと個人的に考えています。

3、4、5については、経営を学ぶ習慣が出来た後で始めてもいいかと思います。

参考:「エンジニアのための参考図書紹介所

 

まとめると、マネージメントを目指すエンジニアは、自分の技術領域を守りつつ、本質力を高める努力と経営学、その中でもマーケティングと戦略についての学習を始めることを推奨します。

専門職コースに進むエンジニアが目指すもの

専門職コースに進むエンジニアは、まさに技術で身を立てるので、自分の得意領域の技術を高めることが第一優先になります。

ただし、製品開発に関わるエンジニアであれば、製品開発としてのイノベーションの本質を捉えて技術を高めて欲しいと思っています。

製品開発のイノベーションのポイントは3つあります。

下図は、技術研究段階から始まって、製品を上市して更に拡販するまでの過程を表していますが、このとき、3つの壁があると言われていて、一つ目が研究段階でゼロから何かを生み出すときの壁で、技術経営用語で「魔の川」と言われるものです。

二つ目の壁は、製品コンセプトから実際の製品の形にするところ、量産化可能な状態で、かつ実際に販売できる価格帯を設定できるコストで実現できるかと言う壁で、「死の谷」と言われます。

そして、製品を上市した後に、市場で勝てる製品にするための様々な仕掛けや努力で、収益を獲得し市場で勝ち残るための壁を「ダーウィンの海」と言っています。

技術者としては、「魔の川」や「死の谷」を超えるための技術開発が使命と考えがちなのですが、冒頭でお話ししたように、世の中、あるいは顧客の購買行動は大きく変わっていて、実は「ダーウィンの海」を超えることが、これから求められるイノベーションということなのです。

もちろん、「魔の川」「死の谷」を超えることもエンジニアとしては当然の使命ですが、「ダーウィンの海」も含めたイノベーションの3つのポイントをバランス良く考えながら技術の向上を目指すエンジニアになるべきなのです。

 

 

ダーウィンの海を越えるということは、顧客価値を高めること、あるいは新しい文化を提案することで、市場を変えて製品の価値を大きく高めるということになります。

つまり、ダーウィンの海を越えるためには、マーケティング思考が必要なのです。

なので、専門職コースに進むエンジニアも、技術以外のスキルとしてマーケティング思考を身に付けるべきと言えます。

技術を深める根拠として、常に顧客価値を向上させることを出発点にするということです。

さらに、技術を深く追求するときに、自身の思い込みで思考を止めないようにするためには、アイデアを活性化しつつ、かつ自身のアイデアを時には疑いながら、正しい方向に自分を導いていく能力も必要です。

そのために必要な能力は、ロジカルシンキングです。

ロジカルシンキングを鍛える2つの魔法の言葉があります。

  • それは何故ですか?
  • だからどうなるのですか?

この2つの言葉が自然に沸いてきて、口癖になってくれば、技術開発を正しい方向に素据えることが出来るようになり、かつ物事の本質を見極められるようになるはずです。

 

まとめると、企業側、エンジニア側の両方から見て、エンジニアとして求められるスキルアップは、マネージャーコース、専門職コースに関わらず、技術力とマーケティング思考、ロジカルシンキングというところになり、マネージャーコースはそれに加えて経営学の基礎を学ぶべきということになります。

 

中小企業でエンジニア教育をどうやって実践すべきか

 

大企業でも中小企業でも、人材育成の基本的な考え方は変わらないはずですが、一つ大事なことは、座学で知識だけを植え付けても効果は少ないということです。

知識と実践が必須です。

特に中小企業では、教育資金や教育のための時間確保という観点からも、無駄な教育は絶対に避けなければなりません。

かと言って、自分で勉強しろというわけにもいきません。

大事なことは、座学を含めた集合研修とOJTとを連携させて、座学で学んだことをすぐに現場で実践できるような環境を作ることです。

現場で教育する体制を整える

最も効率的な教育は現場での教育です。

現場で教育するということは、教育する内容を現場が実践しているということです。

技術の伝承以外、今回、エンジニア教育に取り入れるよう進言しているのは、マーケティング思考とロジカルシンキングで、マネージャーコースのエンジニアには経営学の基礎ということになります。

まず、マーケティング思考とロジカルシンキングについて考えていきます。

この2つを現場で実践するためには、トップ(役員クラス)とマネージャーが、これを修得する必要があります。

トップとマネージャーが研修を受け、知識と実践方法を身に付けて、これを実際の業務プロセスに組み込むことです。

そしてマネージャークラスが、下の人たちを教育するという循環を作ることで、継続的にエンジニアの育成が出来るようになります。

最初のマネージャ―クラスの研修と実践への道すじをつけるところが骨の折れるところになりますが、そこをクリアすることで、強い組織を継続的に維持することが出来ます。

マーケティング思考とロジカルシンキング教育

では、マネージャー向けのマーケティング思考とロジカルシンキングの教育内容についてお話しします。

弊社のオープンセミナーで

を開催しております。(詳細は上記のリンクを参照ください)

それぞれ約4時間のセミナーで、「ジョブ理論とマーケティングセミナー」では、マーケティング思考によってイノベーションをどうやって起こすかということを体得していただきます。

論理思考力向上セミナー」では、TOC(制約の理論)を使った問題解決フレームワークの概要を理解していただき、そこで使う対立解消図(クラウド)という組織で起きている問題を客観的に正しく、思い込みを排除して捉えるトレーニング方法について体得していただきます。

ともに知識と実践方法の概要を理解するには十分ですが、実際に現場での業務フローに組み込むためには、プロセス改革のための準備と活動時間が必要になります。

フューチャーシップ(株)では、製品開発組織の業務プロセスにマーケティング思考を導入し、問題解決を迅速に行う思考プロセスを業務に浸透させるためのノウハウを持っています。

業務への展開方法については、問い合わせフォームより弊社までご相談ください。

マネージャ―コースのエンジニア向け経営学の研修について

経営学の基礎を学ぶには、様々なビジネススクールやE-learningなどが選択肢として考えられます。

MBAや中小企業診断士の資格を取るわけではないので、個人個人の自己啓発に任せるという方法もあるかもしれません。

この場合は、ただ自己学習に委ねるよりは、会社が求めており支援しているという姿勢をみせて、時間的な配慮、経済的な配慮も必要かもしれません。

弊社のエンジニア育成サービスの中にも、幹部候補者に対する経営学の基礎を教え、また自分で学び続けるためのヒントを得られる研修コースも用意しています。詳しくはこちらを参照ください。

 

 

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